取組2:イノベーション創出
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City for Better Hearing
岡山市 × 岡山大学 × デマント・ジャパン株式会社
三者連携で挑む 加齢性難聴対策の地域包括モデル創出



検診車両内に2台搭載。検査者なしで3~5分で難聴の有無、程度がスクリーニングできる。2024年度には県内8市町、約900人に実施し、難聴疑い者は約50%。
日本の加齢性難聴対策は先進国の中でも極めて低い
日本は高齢化が急速に進んでおり、身体機能の衰えに伴うさまざまな健康課題が顕在化しています。その中でも加齢性難聴は、70代で50%、80代では80%以上と、非常に頻度の高い疾患です。加齢性難聴は単なる聴覚やコミュニケーションの問題ではなく、社会的孤立やうつ、認知機能低下など、健康寿命の短縮に直結する課題です。特に認知症との関係は予防しうるリスク因子のうち最大とされており、早期の補聴器装用が推奨されています。しかし、日本における補聴器の装用率は約15%と先進諸国と比較しても極めて低い状況です。
その背景には、聞こえや補聴に対する当事者や社会の意識の低さ、補聴器販売の自由度、価格の高さ等、多数の問題が介在します。特に非都市部では、耳鼻咽喉科や補聴器技能者へのアクセスが限られ、不適切なルートでの補聴器購入者が後を絶ちません。
産官学連携で取り組む社会課題対策 -City for Better Hearing-

これらの課題に対して、本学で多面的な取り組みを実装してきました。2023年度は、本学J-PEAKS事業のフィールドである吉備中央町で検査者不要の自動聴覚検査機器を使用し、遠隔判定が可能な聴覚検診を設置。更に2024年度には本機器を搭載した聴覚検診車AudikaGo(Audika岡山店所有)での聴覚検診を導入、県内8市町で運用してきました。岡山市はこの聴覚検診トライアルに加え、2024年8月より補聴器助成事業も創設。加齢性難聴対策に積極的に取り組んできました。協定締結を通して、「City for Better Hearing(聞こえを支えるまち)」の実現に向け、地域ぐるみで“聞こえ”を支える仕組みを構築し、高齢者のQOL(生活の質)向上と持続可能な地域社会の形成を実現します。

このプロジェクトでは、高齢者や支援者に対して、加齢性難聴と認知症の関係や、不適切な補聴導入への注意喚起を含む啓発を実施し、正しい理解と適切な対応を促進します。同時に、住民に対する聴覚検診を起点に、耳鼻咽喉科受診や適切な補聴導入に向けた情報を提供する体制を整備、加齢性難聴の早期発見・早期対応を地域レベルで実現し、効果を検証します。
非都市部に展開できるヒアリングケアモデル構築
展望としては、他地域、特に非都市部への展開や高齢者福祉政策との統合を視野に入れた持続可能なヒアリングケアモデルの構築を掲げています。更に、高齢者の聞こえと生活の質の向上・介護者介護費削減に繋げ、社会的な意義を追求していきます。
補聴器の普及率が高く、予防医療が生活に根づいているデンマークでは、聴覚ケアが高齢者の自立支援において重要な役割を果たしています。City for Better Hearingは、まさにその哲学を日本の地域社会に根づかせるための挑戦といえます。