取組2:イノベーション創出
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知識習得に人の関与が必須でない時代の到来:教育と広告に大きな変革が起きる
ある医療系大学では、国試対策で教員が大変な労力をかけ、一人ひとりの学生の苦手な問題を洗い出し、指導されていると聴きました。近い将来、そのような労力が必要なくなる時代がきそうです。MSSは、新しい記憶理論とスケジューリングという革新技術でWell-being社会を切り開きます。科研費基盤研究Aに3度採択され、1万人単位でサービスを提供し、高松市や大阪市の教育困難校が確実に変わり始めた他、「広告」の大規模な効果測定も可能になり、広告やデザインを科学する道筋も生まれました。様々な強みを持つJ-PEAKSの大学がつながれば、データサービス分野で日本が世界の中心になることも期待できます。そのストーリーを紹介します。


- 完全習得された問題を自動排除→高い学習効率、教育から知識習得を分離
- 大阪市西成区、外国人労働者の日本語教育への導入→社会課題の本質的解決
- 広告の計画配信と効果測定を実現→広告・デザインの縦断的・科学的評価を実現
記憶の常識が変わる最新の事実:「記憶は消えない」
MSSは新しい記憶理論をベースに開発されています。「記憶はすぐ消える」と言われていますが、それが完全に間違いであることを示す本学の研究グループの成果が、先日海外の主要ジャーナルに掲載されました(注1。国内のトップジャーナルにも、意味のない音列や顔、2字熟語などの情報を、人間が少なくとも数か月間脳内に保持している事実が報告されています。記憶は自覚できないレベルで消えずに残るのです。
自覚できない学習効果(潜在記憶)の積み重ねを完全に可視化し、学習効率と意欲を向上
自覚できない“潜在記憶”の積み重ねをMSSは「完全に可視化」できます。潜在記憶(implicit memory)は言語能力や資格試験等の成績の基盤です。何が可視化されるのかを示したのが図Aです。図Aは、ある学習者の、千を超える英単語の一つひとつについて、MSSの学習量(横軸)に対応して、語彙力(縦軸)が上昇していく様子を描き出したものです。英単語ごとに回帰直線を引き、潜在記憶レベルの成績が最高点を超えた問題を自動的に排除する最適化処理も稼働しています。加えて、潜在記憶の特徴に基づく学習法(覚えようとしない、同じ英単語は1日に6回以上反復しない等)の導入で学習効率がさらに向上し、MSSの学習量が多い学習者ほどGTEC、英検のスコアが上昇する有意な結果が得られ、それぞれ国内のトップジャーナルに掲載されました(注2。
教育困難校の意欲と学力を上げ、企業による外国人労働者の日本語習得支援にも貢献
図Aの成績を個別に平均すると図Bが得られます。図Bは3人の高校生がMSSを3週間継続した結果です。一般のeラーニングは継続が難しいと言われますが、MSSは成績の上昇を短期間で個別フィードバックすることで学習者の意欲を確実に上げられます。漢字が読めず、あきらめている小学生も必ず成績は上がり、それを見るとそのような子ほど意欲が上がる結果が得られています。それを受け、高松市と大阪市の小学校でMSSが導入され、明確な成果が出はじめました。「西成が変われば大阪が変わる」といわれていますが、日本も変わるかもしれません。さらに、社員の語学力向上に莫大な経費をかけている大手企業は科学的根拠に敏感です。外国人労働者等の日本語教育にMSSを導入しようとする企業等と協働も始まっています。
教育はもとより広告やデザインを科学する新たな学術インフラ
MSSは1万人単位に365日サービスを提供しています。毎日の学習終了画面で、特定の属性の学習者に限定し、地元企業等の広告を計画的に配信し、企業等に対するイメージ調査等を縦断的に実施できるようになりました。広告の配信スケジュールに対するイメージの変化が可視化され、とても面白い結果が得られています。広告を見るほど企業イメージが上がるわけではないようです。これを芸術系の研究者が利用すれば、デザイン等の効果を縦断的に比較検討できますから、面白いことができるはずです。また、広告費はMSSの運用費等に充てています。
(注1 https://doi.org/10.3758/s13414-025-03108-4 (注2 https://doi.org/10.15077/jjet.49004
