取組2:イノベーション創出
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山林資源の可視化で地域課題解決に挑む

岡山県は、年間を通じて温暖で晴天が多い「晴れの国」として知られ、県土の約6割が森林に覆われています。この豊かな森林資源は、木材やジビエなど地域経済を支える重要な役割を果たす一方、高齢化や人口減少の影響で担い手不足が深刻化し、適切な管理が難しくなっています。また、木材需給の不均衡や鳥獣被害の拡大、さらには気候変動の影響も顕在化しており、森林資源の持続可能な管理と効果的な活用が地域の課題となっています。
こうした背景のもと、本学は「令和6年度岡山県産学連携スタート補助金」の枠組みを活用し、服部興業株式会社(本社:岡山市北区)と共同で「山林資源の可視化のためのデータ収集および解析方法」に関する研究を進めています。従来、山林資源の主要な指標である材積量(森林内の木材の体積)は、経験や勘に頼る部分が大きく、見積もりと実際の収穫量に乖離が生じるケースがありました。本研究では、ドローンや地上移動ロボットを用いて効率的かつ正確なデータ収集を実現し、材積量の見積もり精度を向上させることを目指しています。
本学学術研究院環境生命自然科学学域の亀川哲志教授の研究グループは、山林内部の空中および地上からの点群データを取得するためのドローンや地上移動ロボットの研究開発を進めています。また、収集した点群データから、木々の胸高直径(地上1.3mの高さで測定される直径)や樹高などの基本特性を推定する手法の研究も行っています。一方、同学域の藤森和博准教授らの研究グループでは、低消費電力無線通信規格(LPWA: Low Power Wide Area)を用いた山林データの効率的な伝送方法を研究しています。さらに、同学域の野上保之教授らの研究グループでは、各種のデータを活用して木材やジビエなどの山林資源の価値向上に向けた施策を検討しています。

岡山県の山林では、材積量だけでなく、土壌の水分量や鳥獣害の有無といった要素も森林の価値評価において重要です。藤森准教授の研究グループでは、本学津島キャンパス近隣の山林にセンサーを設置し、これらのデータを収集しています。LPWAを利用した通信システムを活用し、収集したデータを研究室に効率的に伝送する実験を行っており、これにより実用化に向けた重要な知見が得られています。
本研究は、岡山県の地域的な強みを最大限に活かしながら、森林資源の価値向上と地域産業の発展を目指す取り組みです。将来的には、得られたデータを木材生産・流通に関わるサプライチェーン全体の需給データと連携させることで、山林資源のさらなる付加価値の創出と持続可能な森林管理のモデルケースとして全国に横展開し、社会変革の実現を目指します。